交通事故の見舞金とは?
交通事故に遭った時に受け取れる可能性がある見舞金には、加害者からのものと、保険からのもの、共済からのものの3種類があります。それぞれの特徴に加えて、受け取っていいものかどうかの判断についても解説します。
加害者からの見舞金
加害者が任意で、謝罪の気持ちを表すために渡すものです。ただし、加害者側は示談金の一部として見舞金を支払っているケースがあり、その場合、示談交渉の時に示談金から見舞金分が差し引かれて提示されます。この見解の相違はトラブルに発展しやすいので、受け取る際に「何のつもりで渡しているのか」を確認しましょう。
保険会社からの見舞金
被害者が加入する保険会社から、支払われるものです。被害者が「搭乗者傷害保険」「傷害一時金特約」など、該当する保険に契約していることで受け取れます。この見舞金は、保険の翌年の等級に影響はありません。交通事故に遭ったことを保険会社に伝え、安心して受け取り、初期の治療費や生活費にあてるなど活用しましょう。
共済からの見舞金
共済とは、特定の地域の住民や特定の職業に就いている人たちが組合員となって助け合う仕組みです。組合員になっておくことで、事故に遭った場合に金銭面などで非常に助かります。共済の中には、交通事故を含む交通災害に特化した共済もあり、自動車や自転車の運転中や搭乗中、道路歩行中などに交通事故に遭った時に、見舞金を受け取れます。
交通事故の見舞金は受け取るべきか?
これまで解説してきたとおり、交通事故の見舞金には、安心して受け取ってよい「(被害者側の)保険会社からの見舞金」「共済からの見舞金」と、状況に応じて判断すべきな「加害者からの見舞金」があるのです。
慰謝料・賠償金と見舞金の違い
慰謝料・賠償金は示談金の一部であり、本来は見舞金とは全く別のものです。ただし先述したとおり、慰謝料の前払い金として「見舞金」が扱われることも多いため、注意が必要です。見舞金を受け取ったことが原因で、本来受け取れる示談金額が減額されることがないよう、示談金や慰謝料・賠償金の一部ではないか確認しましょう。
交通事故の見舞金の相場
それぞれの見舞金の相場について、わかりやすく解説します。
加害者からの見舞金に相場はない
加害者からの見舞金は、謝罪の気持ちの表れなので、相場はありません。また、あくまで加害者の任意によるものなので、金額に疑問があったり、全く受け取れなかったとしても、請求することはできません。
保険会社からの見舞金の相場は契約で決まっている
保険会社からの見舞金は、入院・通院日数をもとに算出される「日額方式」や怪我の部位で金額が決まる「部位症状別払」などで決まります。被害者が加入する保険会社からの見舞金は、受け取っても、示談金額に影響はありません。
共済からの見舞金の相場は交通災害の程度で決まる
共済からの見舞金は、各共済が支払い要件と金額などを決めており、それにもとづいて支払われます。「ちょこっと共済」の場合は、災害等級を定めており、その等級に応じた見舞金が支払われます。
等級 |
交通災害の程度 (交通災害を受けた日から1年以内) |
Aコースの場合 費用:年額1,000円 |
Bコースの場合 費用:年額500円 |
1等級 |
死亡※1 |
300万円 |
150万円 |
2等級 |
重度の後遺障害※2 |
200万円 |
100万円 |
3等級 |
入院日数※3 30日以上の傷害 |
34万円 |
17万円 |
4等級 |
入院日数※3 10日以上30日未満
または実治療日数※4 30日以上の傷害 |
14万円 |
7万円 |
5等級 |
実治療日数※4 10日以上30日未満の傷害 |
8万円 |
4万円 |
6等級 |
実治療日数※4 10日未満の傷害 |
4万円 |
2万円 |
※1. 死亡とは、交通災害を受けた日から1年以内に、その交通災害が原因で死亡したときをいいます。
※2. 重度の後遺障害とは、交通災害を受けた日から1年以内にその交通災害による傷害が、身体障害者福祉法施行規則別表第5号に掲げる1級から3級までの障害の状態に至ったときをいいます。
※3. 入院日数とは、交通災害による傷害のため、交通災害を受けた日から1年以内にその交通災害が原因で入院治療を受けた日数をいいます。
※4. 実治療日数とは、交通災害による傷害のため、交通災害を受けた日から1年以内にその交通災害が原因で入院治療および通院治療を受けた合計日数をいいます。(同日に2か所以上の医療機関で治療を受けているときは1日として計算します。)
加害者が見舞金を持って来たときの注意点
加害者がお見舞いの際にお金(見舞金)を持参することがあります。受け取ることで、後に不利益を被るケースもあります。加害者がお見舞いに来た時に、注意すべき点を解説します。
見舞金を安易に受け取ってはいけない
加害者は示談金の一部として、お金を持ってきているかもしれません。その場合、受け取ってしまうと、示談金から見舞金分が差し引かれてしまいます。また、高額の見舞金を受け取ると、謝罪と誠意を受け取ったと見なされ、刑罰の減軽、示談金の減額などにつながる可能性があります。
受け取る際は見舞金が示談金の一部でないか確認する
謝罪の1つとして加害者が持参したお金を受け取る際は、先に述べた示談金が減額されるかどうかを把握しておくことが重要です。具体的には、示談金の一部ではないか確認すると同時に、必要に応じてその内容を書面にして加害者の合意を得ておくと安心です。
お見舞いの場で示談金の交渉はしない
加害者が持参したお金が、示談金の一部かどうかを確認した流れで、示談金の内容まで話がおよぶこともあります。しかし、その場での当事者同士による示談金交渉は避けましょう。適切な額の示談金を受け取るには、事故で受けた怪我の治療が全て完了してからにすることが大切です。また、感情的になってしまい、後の示談交渉の妨げになることがあります。
お見舞いの品物は受け取ってもよい
一方、加害者が謝罪の気持ちとして持ってきた花やフルーツなどのお見舞いの品物は、感情的にならず、素直に受け取ってもよいです。基本的に示談金には影響しません。
経済的な理由で見舞金が必要な時の対処法
交通事故に遭うと、治療費や通院交通費などの出費がかさみます。さらに怪我や入院で仕事ができず収入が減少するなど、経済的にきつくなることがあります。その場合の対処法について解説します。
賠償金の前払いを依頼してみる
示談交渉が成立するのは、損害額が確定する治療完了後の場合が多く、賠償金を受け取るまでに時間がかかります。被害者の金銭的な問題を解消することを目的に、示談成立前に生活費や治療費として賠償金の一部を先に受け取れる制度があります。その制度である「内払金制度」と「仮渡金制度」を解説します。
内払金制度
任意保険会社の制度です。加害者側の任意保険会社が「内払金制度」を設定している場合、示談成立前に、治療費や休養損害などを「内払金」として受け取れます。ただし内払金として受け取った分は、示談金から差し引かれます。
仮渡金制度
自賠責保険の制度です。示談成立前に、一定の金額を「仮渡金」として受け取れます。被害者が1回だけ請求でき、金額は傷害の程度に応じて「5万円」「20万円」「40万円」、死亡の場合「290万」と決まっています。ただし仮渡金として受け取った分は、示談額から差し引かれます。また、仮渡金が最終的な示談金を上回った場合は、差額分を返金しなくてはなりません。
共済の見舞金の支払いを請求する
「ちょこっと共済」の会員の場合は、事故に遭った時に「見舞金」の支払いを請求できます。災害等級ごとに金額が決まっており、Aコース(年会費1000円)加入の場合は、最高300万円まで受け取れます。請求は、交通事故証明書と病院の診断書など必要書類を、市役所や町村役場に提出することでできます。請求可能な期間が決まっているので注意が必要です。
加害者としてお見舞いに行くときの注意点
交通事故の加害者になったらお見舞いに行き、謝罪の気持ちを伝えることが大切です。それが社会儀礼でもありますし、誠意を示すことで刑罰が軽くなり、賠償金が低くなる可能性もあります。
お見舞金ではなくお見舞いの品を持参する
お見舞いとして、お金を渡すのは避けましょう。被害者が不快に感じる可能性があり、また示談金との関連で後々トラブルに発展しかねません。また、生花を禁止している病院もあります。お見舞いの品としては、菓子折りが無難です。価格帯は5000円~1万円くらいの高過ぎも、安過ぎもしない価格がよいでしょう。なお、「のし紙」は付けません。
示談に関連する話は控える
お見舞いは、謝罪の気持ちを伝えるのが目的です。被害者、加害者共に損害賠償について気になるところですが、お見舞いの場での示談交渉は絶対にしてはいけません。また、病室に被害者のご家族がいた場合は、ご家族に対してもきちんと謝罪しましょう。
保険会社の人の同行をお願いする
被害者と加害者の二人きりだと、感情的になってしまうこともあります。トラブルを避けるためにも、お見舞いは保険会社の人に同行をお願いしてもよいでしょう。なお、保険会社が弁護士に示談交渉を依頼している場合は、弁護士にも相談する必要があります。
まとめ
交通事故に遭った場合の見舞金には、「加害者から」「保険会社から」「共済から」の3つがあり、それぞれの相場と受け取る際の注意点を解説してきました。加害者からの見舞金は特に、注意が必要であることを認識していただけたと思います。
ちょこっと共済は、東京都の39市町村が共同で運営する公的な交通災害共済で、交通事故に遭い治療を受けた会員に対して見舞金を支給する制度です。
東京都の市町村に住民登録のある方なら年齢・健康状態に関係なくどなたでも加入することができ、会費は年額1,000円または500円と大変安価です。
万が一の事故に備えて、お守り代わりにぜひご加入されてはいかがでしょうか。