保険はいらないという人の2つの主張
保険はいらないという人のなかには「公的保険でカバーできる」、「貯蓄でカバーできる」と主張し、保険の必要性を否定しているケースがあります。
なぜそのように主張するのか、それぞれの考えについてみていきます。
1.公的保険でカバーできる
公的保険で自身に起こる可能性のあるリスクをカバーできるため、保険はいらないという人もいます。
公的保険とは、国民全員に加入が義務付けられている保険のことです。
公的保険には生活のなかで発生したケガや病気などの治療費を一部控除したり、職場でケガをした場合の保障などが受けられたりする制度があるため、保険はいらないと判断していると思われます。
公的保険については、のちほど詳しく解説します。
2.貯蓄でカバーできる
自分で万が一のときに備えて貯蓄しているから、保険はいらないという人もいます。
保険料は保険を使わなければムダになるが、貯蓄ならムダにならないと考えているためです。
これは過去に大きな怪我や病気を経験していない人に多く見られる傾向で、いままで保険によって助けられた経験がないことに起因しています。
またそういった人は、保険を不確定要素の多い投資と考えている可能性があるでしょう。
保険に加入しないリスク
このように保険はいらないという人は一定数いますが、本当にそれでよいのでしょうか?
保険に加入するかどうかの判断には、保険に加入しないことで発生するリスクを理解する必要があります。
ここからは保険に加入しない場合のリスクについて解説します。
1.公的保険でカバーできない支出
公的保険といっても、すべての費用をまかなえるわけではありません。
高額療養費制度を使っても公的保険でカバーできない支出があるため、支出を抑えるには保険に加入しておく必要があります。
公的保険でカバーできない主な支出は下記の4つです。
・入院時の差額ベッド代
・入院時の食事代
・先進医療の技術料
・通院時の交通費
このなかでも入院時の差額ベッド代と先進医療の技術料は高額になるケースがあるため、保険に入っていないと費用の捻出に苦労する可能性があります。
2.ある程度の貯蓄を備えるには時間がかかる
まとまった貯蓄を備えるには時間がかかるため、現在貯蓄がない人は保険に加入したほうが良いかもしれません。
多少の貯蓄があっても、病気やケガなどで使ってしまうと将来使えるお金が大きく減ってしまう可能性もあります。
入院で失う費用の目安と生命保険による充当割合
保険のいる、いらないを判断する際の参考として、入院で失う費用の目安と生命保険による充当割合を把握しましょう。
入院で失う費用の目安
生命保険文化センターの「令和4年度 生活保障に関する調査」によると、直近の入院時における自己負担費用と逸失収入の総額の平均は26.8万円です。
ただし5.1%は、自己負担費用と逸失収入の総額が100万円を超えています。
つまりケガや病気の症状によっては、100万円以上の費用が失われる可能性もあるということです。
※逸失収入:ケガや病気などにより得る機会を逸した収入のこと
生命保険による充当割合
同じく生命保険文化センターが実施したアンケート調査によると、生命保険加入者の自己負担費用や逸失収入を生命保険で充当した人の割合は63.6%です。
つまり治療や入院などをした人の約6割が生命保険から支払いを受けたということになります。
生命保険未加入で後悔した人の体験談
高齢者のなかには、数千万円の貯蓄があっても医療保険(生命保険)未加入で後悔した人がいます。
60歳を過ぎたあたりから医療費がかさむようになり、80歳になる頃には数千万円が数百万円にまで減少したためです。
また病気やケガをしたけれど保険に入っていたからお金をもらえた、という人の意見を聞いて後悔する人もいます。
保険に加入するときのポイント
これまでの流れで保険に興味を持った人もいるのではないでしょうか?
そこでここからは、保険に加入するときのポイントをお伝えします。
定期保険か終身保険かにこだわる
定期保険の主な特徴は、保障を受けられる期間が決まっている点と、保険料は掛け捨てとなる点です。
また保険料は安く、保障が手厚いといったメリットがあります。
つまり定期保険は、一定期間だけでもよいので少ない保険料で大きな保障を受けたいという人におすすめの保険です。
一方、終身保険は保障が一生涯で解約した際には返戻金が受け取れます。
ただし定期保険に比べ保険料は高く、保障はそれほど充実していません。
したがって終身保険は保険料の掛け捨てを避けたい、将来にお金を残しておきたい人におすすめです。
健康なうちに加入する
保険は体調が良好なうちに加入したほうが有利です。
なぜなら健康状態によっては加入できる保険が限られたり、保険料が変わったりするからです。
「健康状態を申請せずに保険に加入すればよいのでは?」と考えるかもしれませんが、保険には告知義務があり、健康状態の不安を隠したまま加入できない仕組みになっています。
また保険会社によっては、健康診断結果の提出が必要なケースもあります。
加入必須の公的保険と民間の保険
上述したように公的保険には国民全員が加入する必要があります。
一方、民間の保険は多くの選択肢の中から、どの保険に加入するかを選ぶことが可能です。
ここでは公的保険と民間の保険について種類や特徴を解説します。
すべての人が加入する公的保険
公的保険制度は下記の7つのカテゴリーに分かれており、それぞれ保障の対象や内容が異なります。
・公的医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度・高額療養費制度・傷病手当金)
・労災保険
・公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)
・公的介護保険
・自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)
・障害福祉サービス
・雇用保険
年代や状況に応じて選べる民間の保険
民間の保険には、ケガや病気に対応する「傷害保険」や「医療保険」、公的年金を補う「個人年金保険」、死亡の際に遺族へ保険金が支払われる「死亡保障」などがあります。
これらの保険は、年代や状況に応じて必要なものを厳選し、加入を検討すると良いでしょう。
次の章で、年代や状況別に保険への加入を検討するポイントについて解説します。
【年代別】保険のいる・いらないを検討するポイント
ここでは下記の年代別に、保険の加入を検討するポイントについて解説します。
・子どもや赤ちゃん
・20~30代の人
・40~50代の人
・60代以上の人
子どもや赤ちゃん
子どもや赤ちゃんは、自治体の助成費制度を受けられるため、医療保険の必要性は低いと考えられるのが一般的です。
一方で、健康で若いうちは保険料が安いため保険に加入する家庭もあります。
また教育機関での病気やケガは、公的な共済制度で補償される場合が多いため、掛け金の安い保険を選択する人もいます。
その他、ケガに備える傷害保険、相手や相手の物を傷つけたときの個人賠償責任保険、学資保険を検討する家庭も多いでしょう。
20~30代の人
20~30代の人は活発に働き、結婚・出産などのライフイベントを経験する人も多くいます。
入院一時金保障が付いている医療保険や、家族を守るための死亡保険などを検討すると良いでしょう。
さらにスポーツやアウトドアなどを楽しむ人はケガの可能性を考慮して、傷害保険も検討することをおすすめします。
また女性は、出産に起因するリスクも想定して保険を検討すると安心です。
40~50代の人
40~50代は住宅ローンや教育費の負担が増え、病気やケガのリスクも増える時期です。
もしものときのことを考えて入院日額保障を付けると、長期入院に備えられます。
三代疾病保障でリスクに備えるのもこの年代あたりからが妥当でしょう。
また、病気などによる収入減に備え、就業不能保険や所得補償保険などを検討することもおすすめします。
60代以上の人
60代以上の人は子どもが独立しているケースも多いため、保障を減らすことを考えても良い時期と言えます。
ただし、高齢になるほど病気やケガのリスクが高まるのも事実です。
しかも高齢になるほど毎月の保険料が高額になるため、ある程度若いうちから医療保険・生命保険などに加入しておいた方がよいという考え方もあります。
子どもの成長など、家庭環境に応じて保険を検討すると良いでしょう。
【状況別】保険のいる・いらないを検討するポイント
ここからは、下記の状況別に保険の必要性について解説します。
・家族を養っている人
・先進医療にかかる技術料の支払いに備えたい人
家族を養っている人
家族を養っている人は、ある程度の手厚い保険があると安心でしょう。
なぜなら、ケガや病気などが原因で働けなくなると、残された家族が困窮するためです。
収入減に備え、就業不能保険や所得補償保険なども加入すると、想定外の事態に陥っても乗り切れる可能性が高まります。
また専業主婦(主夫)など収入のない人でも、家事や育児ができなければ家事代行やホームヘルパーなどの費用がかかるケースもあるため、支出が増えることを想定しておくことが大切です。
先進医療にかかる技術料の支払いに備えたい人
先進医療にかかる技術料は自己負担となるため、不安な人は先進医療特約を付けると良いでしょう。
先進医療は陽子線治療や重粒子線治療などさまざまな医療技術があり、費用は異なりますが、おおよそ30万円〜300万円ほどかかるケースが多いようです。
費用にかなり幅があるものの、先進医療に対応する特約を付けていれば、医療費を心配せずに先進医療を受けられます。
生命保険・医療保険の加入率
「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」のデータによると、民間の生命保険や郵便局、JAなどの生命保険加入率は全体で79.8%となり、男女別に分けると男性は77.6%、女性は81.5%でした。
このデータから、日本人の約8割が生命保険に加入していることが見てとれます。
保険に加入するメリット
保険に加入すると、支払った保険料により、一定の金額の所得控除が受けられるため、所得税や住民税が少なくなる場合があります。
ただし生命保険料控除制度には、新制度と旧制度があり、控除の内容が異なります。
2011年12月31日以前に契約した保険は旧制度に該当するため、間違えないように注意しましょう。
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控除対象 |
控除額(最大) |
控除合計額(最大) |
新制度(2012年1月1日以降の契約) |
・一般生命保険料控除
・介護医療保険料控除
・個人年金保険料控除
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・所得税各4万円
・住民税各2.8万円
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・所得税12万円
・住民税7万円
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旧制度(2011年12月31日以前の契約) |
・一般生命保険料控除
・個人年金保険料控除
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・所得税各5万円
・住民税各3.5万円
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・所得税10万円
・住民税7万円
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まとめ
「保険は本当にいらないのか」について、加入しないリスクや制度などを交え解説しました。
生命保険や医療保険の加入に強制力はありませんが、加入しないリスクを考慮すると、年齢や家族の成長に応じて検討することをおすすめします。
保険に加入するかどうかは、保険のメリットやリスクを理解した上で判断することが大切と言えます。
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