交通事故によって顔に傷を負った場合、傷あとが残ってしまう可能性もあります。
本記事では、顔を含め身体に残った傷あとに対して慰謝料を請求できるか調べている方に向けて、その疑問に答えます。結論をいうと、傷あとに対する慰謝料請求は、後遺障害認定を受けることで可能になります。
認定時に決まる等級により、受け取れる金額の相場が異なりますので、併せて解説します。参考にしてください。

交通事故で顔に傷が残ってしまった場合、慰謝料を請求できるか

交通事故で顔を含め身体に傷あとが残ってしまい、傷あとが「後遺障害」に認定された場合、被害者は加害者に対して賠償金を請求できます。傷あとに関する賠償金の種類は、「後遺症慰謝料」と「逸失利益」の2つで、両方を請求できるケースもあります。傷が残った部位と傷の大きさに応じて、後遺障害に認定されるかどうか、そして認定される場合は後遺障害等級が決まります。なお、等級ごとに賠償金の相場が決まっています。以下で詳しく解説します。

慰謝料の請求には後遺障害認定が必要

後遺障害とは何か

「後遺症」と「後遺障害」は、似た言葉ですが異なります。後遺症は、治療で完治せず回復が見込めない症状のことをいいます。一方、後遺障害とは、交通事故によって生じた後遺症のうち、身体に残った障害によって労働能力が損失・低下したことが、所定機関に認定されることです。よって、医師から「後遺症が残る」と告げられた場合でも、後遺障害と認定されるとは限りません。

後遺障害には等級がある

後遺障害には等級があり、部位や程度によって、症状が最も重い第1級~14級(および要介護第1級、第2級)に分かれています。等級ごとに、身体の部位に応じた障害の認定基準(各号)が定められており、後遺障害のある部位はどこか? その部位にどのような後遺障害が残り、労働力の低下の程度はどうなのか? 基準に照らし合わせて等級が認定されます。

身体に傷あとが残ったことで認定される可能性のある後遺障害等級5つ

身体に傷あとが残ったことで認定される可能性のある後遺障害等級は、第7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」、第9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」、第12級14号「外貌に醜状を残すもの」、第14級4号「上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」、第14級5号「下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」の5つです。等級の数字が小さい方が、後遺障害の程度が重く、請求金額が高くなります。

顔に傷あとが残ってしまった場合の後遺障害等級は3つ

上記5つの中で、顔に傷あとが残ってしまった場合に、認定される可能性のある後遺障害等級は、第7級12号、第9級16号、第12級14号の3つです。傷あとの大きさと人目につくかどうか(目立つかどうか)によって、3つのうちのいずれかが認定されます。

「外貌(がいぼう)」「醜状(しゅうじょう)」の意味

法律では、慰謝料を請求できるような目立つ傷あとのことを「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」と呼びます。外貌とは、日常的に露出することの多い、頭部、顔面部、頸部(首)のこと。醜状とは、人目につく・目立つ傷あと(あざ、ケロイド、欠損などを含む)のことです。傷あとが、まゆ毛や頭髪などで日常的に隠れている場合は、外貌醜状と認定されないこともあります。

後遺障害が認定されるとどうなるか

後遺障害に認定されると、治療費や休業損害、慰謝料とは別に、後遺症慰謝料と逸失利益の請求も可能になります。後遺症慰謝料とは、後遺症による精神的苦痛に対する賠償金のこと。逸失利益とは、後遺障害により仕事などに支障が生じたことで、得られなくなった利益のことです。後遺障害等級が高い(数字が小さい)ほど、請求できる金額は大きくなります。なお、2010年6月10日以降の事故については、等級の認定に性別は左右されなくなりました。顔の傷あとに対する後遺障害等級と認定基準については、後述します。

顔以外の傷あとも「外貌醜状」として慰謝料請求できるか

外貌醜状として認められ、慰謝料を請求できるのは、頭部、顔面部、頸部(首)に傷あとが残った場合がほとんどです。ただし外貌醜状には含まれないが、腕や足に残った傷あとで後遺障害等級が認められるケースもあります。それは、前述の後遺障害等級第14級4号、第14級5号のケースで、日常的に露出する部分に目立つ傷あとが残った場合です。

顔に傷あとが残ってしまった場合の後遺障害等級と認定基準

第7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当するのは、次の3つのケースです。①頭部に手のひらサイズ(指の部分は含まない)以上の外傷や熱傷、または頭蓋骨に手のひらサイズ以上の欠損、②顔面部に鶏卵サイズ以上の外傷や熱傷、または10円硬貨サイズ以上の組織陥没、③頸部に残った手のひらサイズ以上の外傷や熱傷。例えば、顔の左ほおに鶏卵サイズより大きな外傷のあとが残った場合や、首からうなじにかけて手のひらよりも大きな火傷あとが残った場合です。

第9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」

「外貌に相当程度の醜状を残すもの」に該当するのは、顔面部に長さ5cm以上の線状の傷あとがあるケースです。例えば、顔の左目下からほおにかけて6cmの長さの線状の傷あとが残った場合です。

第12級14号「外貌に醜状を残すもの」

「外貌に醜状を残すもの」に該当するのは、次の3つのケースです。①頭部に鶏卵サイズ以上の外傷や熱傷、または頭蓋骨に鶏卵サイズ以上の欠損、②顔面部に10円硬貨サイズ以上の外傷や熱傷、または長さ3cm以上の線状の傷あと、③頸部に残った鶏卵サイズ以上の外傷や熱傷。①~③全てにおいて、2箇所以上の同様の傷あとがある場合は、面積や長さを合算して判断されます。なお、顔面神経麻痺で後遺障害に認定されるケースも、この第12級が適用されます。詳しくは後述します。

顔の傷あとが認定された場合に請求できる賠償金の種類

1.後遺症慰謝料

交通事故で受けた怪我が完治せず後遺症が残り、その後遺症が「後遺障害」に認定された場合に、被害者が加害者に請求できる賠償金は、2種類あります。そのうち1つが「後遺症慰謝料」です。後遺症慰謝料とは、後遺症によって生じる精神的苦痛に対する賠償金です。顔の傷あとの場合は、前述で解説してきた後遺障害等級に認定された場合に、加害者に請求できます。

2.逸失利益

もう1つが「逸失利益」です。逸失利益とは、後遺症により仕事などに支障が生じたことで、得られなくなった利益のことです。被害者は加害者に、逸失利益の損害分を賠償金として請求できます。
ただし、後遺症慰謝料は後遺障害等級の認定を受ければほぼ必ず請求できますが、逸失利益は「労働能力が明らかに低下した、損失した」ことが認められなければ請求できません。例えば、役者やモデルの仕事をしていて、顔の傷あとが後遺障害等級の認定された場合、請求できる可能性は高いです。

【注意】逸失利益の請求は問題を伴うことも多い

先述で触れたとおり、逸失利益を請求できるかどうかは、労働能力に対する後遺症の影響度合いが争点になります。顔の傷あとの場合、身体や脳の機能に影響はなく、事故前と同じように動ける(働ける)ことを理由に、加害者側の保険会社が認めないケースも多くみられます。

顔の傷あとで請求できる賠償金の相場・算出方法

後遺症慰謝料の相場

後遺症慰謝料の金額は、「自賠責基準(被害者の最適限の補償を目的とした基準)」「任意保険基準(保険会社が独自に定めている基準)」「裁判基準(過去の裁判で認められた賠償金額を目安とした基準)」の3つの基準があり、選ぶ基準で金額が大きく変わります。金額の相場は、裁判基準>任意保険>自賠責基準の順に金額が大きく、裁判基準は自賠責基準の2~3倍になります。相場の比較について詳しく知りたい場合は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称、赤い本)で調べられます。

後遺障害慰謝料の相場比較(自賠責の基準と裁判基準)

後遺障害慰謝料の金額について、一例を紹介します。赤い本によると、後遺障害等級7級12号認定の場合は、自賠責基準では419万円、裁判基準は1000万円。同じく9級16号認定の場合は、自賠責基準249万円、裁判基準690万円。同じく第12級14号認定の場合は、自賠責基準94万円、裁判基準290万円です。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」2021上巻より抜粋・参考、2020年4月1日以降に起きた事故に適用

後遺障害逸失利益の算出方法

後遺障害の逸失利益の賠償金額は、下記の計算式で算出されます。

基礎収入×後遺障害による労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除係数)

基礎収入とは、30歳以上の給与取得者は事故前の収入金額、30歳未満は全年齢の平均賃金。
労働能力喪失率とは、後遺障害により失われた労働能力の割合(労災保険の基準が準用される)。
ライプニッツ係数とは、逸失利益として将来の利益を一括で受け取ったことで得られる利益(銀行に預けたときの利息など)を差し引くための係数。

実際に算出するのが難しい場合、弁護士への相談がおすすめです。

顔の傷あとの後遺障害審査の特徴・ポイント

後遺障害の認定審査は、通常、医師の後遺障害診断書(該当部位の写真など)など書類をもとに行われますが、顔の傷あとなど外貌の醜状の審査は、面談によって行われるのが一般的です。具体的には、審査機関へ訪問し、審査員による傷あとの確認(大きさや状態を確認)を受けます。適正な審査結果を得るためには、診断書を作成する医師への相談はもちろんですが、傷あとが仕事に与える影響を正確に主張できるように弁護士に相談することもポイントです。なお、後遺障害等級第12級14号に該当する大きさよりも傷あとが小さい場合は、審査の結果、後遺障害等級「非該当」と判断される可能性があります。

顔の傷あとに対して適切な賠償金を受け取る方法

適切な賠償金を受け取るには、適正な後遺障害等級の認定が必要となります。弁護士に相談し、傷あとが仕事に与える影響や労働能力喪失期間を適切に伝えてもらうのがおすすめです。後遺症慰謝料についても、弁護士に裁判基準を用いて交渉してもらうことで増額が期待できます。また、後遺障害に該当しない場合でも、傷害慰謝料を増額して請求できる可能性があります。その際にも、専門的な知識が必要になるため、弁護士のサポートがあると助かります。

まとめ

交通事故で顔に傷が残ってしまった時、傷あとの部位や程度(状態)によって、加害者に慰謝料を請求できる場合と、できない場合があります。請求するために必要な後遺障害等級について、認定基準と請求金額の相場についても解説してきました。適正な等級認定を受け、適切な賠償金を受け取るためにも、本記事でお伝えした情報を参考にしてください。

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