無保険事故とは
無保険事故とは、一般的に事故加害者が「無保険の状態」で起きた事故のことをいいます。具体的には「自賠責保険に加入しているが、任意保険に未加入の状態」のケースと、「自賠責保険、任意保険の両方とも未加入の状態」のケースがあります。事故加害者が無保険だった場合、被害者が十分な損害賠償を受けられるかが争点(リスク)になります。
自動車の保険制度|自賠責保険、任意保険とは
自動車の保険制度は、万が一の交通事故への備えとして加入するものです。被害者救済を目的とし、運転者に加入が義務付けられている「自賠責保険」と、義務はなく本人の意思で加入する「任意保険」の2種類があります。自賠責保険と任意保険は、制度の目的や保障の内容が大きく異なります。
自賠責保険とは
自賠責保険とは、交通事故の被害者に対する最低限の補償を行うため、法律で加入が義務付けられている保険です。保障の対象は被害者への人身損害(死傷)のみで、被害者側の物損(自動車の破損など)や加害者側の損害(人身損害、物損ともに)は対象外。人身損害の補償として支払われる保険金の限度額も、「傷害による損害:上限120万円」「後遺障害による損害:上限4000万円」「死亡による損害:上限3000万円」と決まっています。
任意保険とは
任意保険のことを、一般的に「自動車保険」と呼びます。前項目で解説したとおり、自賠責保険から支払われる金額には上限があります。任意保険は、自賠責保険でカバーしきれない損害に備えて、本人の意思で加入します。任意保険の保障は商品によってさまざまですが、大きく分けて「賠償責任保険(相手方への補償)」「傷害補償(自分・搭乗者への保障)」「(自分の)自動車の保障」の3つの補償(保障)があります。
交通事故に遭った場合、自動車保険に加入しているか確認することが重要
交通事故に遭った場合、相手の住所・氏名・連絡先などの情報とともに、自賠責保険と任意保険(自動車保険)の加入の有無を確認することが重要です。なぜなら、保険の加入状態によって考えられるリスクと、対処法(賠償請求方法)が異なるからです。
自動車保険に加入していない人が1割いる
交通事故に遭った時、相手(加害者)が「無保険」の可能性はどれくらいあるのでしょうか? 保険の普及率調査※によると、全国の対人賠償普及率は自動車共済13.3%、自動車保険75.0%。合わせて88.3%となっており、残りの約10%が未加入とのことです。つまり、約1割の人が任意保険に入っていないのです。さらに、中には加入義務のある自賠責保険にも未加入であることもあります。
無保険事故が起こった際の被害者のリスクと対処法
自分が交通事故の被害者となり相手(加害者)が無保険の場合の、リスクと対処法をわかりやすく解説します。
交通事故の加害者が無保険の場合の被害者側のリスク
相手(加害者)が自賠責保険のみ加入している場合、加害者の自賠責保険から治療費や慰謝料など人身損害に対する賠償を受けることができます。しかし賠償の金額には上限があり、しかも物損は対象外となっているため、不足分については加害者本人に請求する必要があります。また、自賠責保険にも加入していない場合、全ての賠償を加害者本人に請求する必要があり、十分な賠償を受けることが困難になるリスクがあります。
交通事故の加害者が無保険の場合の対処法1(直接交渉)
交通事故は、通常は任意保険会社間で示談交渉が行われます。しかし、相手(加害者)が任意保険未加入の場合、自賠責保険の支払限度額を超えた分の賠償について、加害者本人に請求することになります。(自分に過失が無ければ)自分側の任意保険会社は示談交渉を代行できないため、当事者間の話し合いになり、解決が非常に困難になります。
当事者間で示談した場合は、踏み倒しのリスクを低くするために、内容を公正証書として残すと安心です。加害者が示談に応じない場合は、「内容証明郵便を送る」「裁判を起こす」などの対処も有効です。また、状況に応じて弁護士に示談交渉を依頼することも必要になります。この際、任意保険の「弁護士費用特約」を利用することで弁護士費用をまかなえることがあります。
交通事故の加害者が無保険の場合の対処法2(直接交渉以外)
自賠責保険への請求方法には、加害者が支払った賠償金額を保険会社に請求する「加害者請求」と、被害者が損害賠償の支払いを加害者側の自賠責保険会社に直接請求する「被害者請求」があります。相手(加害者)が任意保険のみ未加入で示談交渉がうまくいかない場合は、この被害者請求を行うのが有効です。ただし、請求できるのは自賠責保険の対象である人身損害の分のみです。なお、加害者が自賠責保険にも未加入の場合は、国土交通省が加害者に代わって被害者の損害を補償する「政府保障事業」の制度を利用して保障を受けることができます。
交通事故の加害者が無保険の場合の対処法3(被害者自身の保険を利用)
相手(加害者)が無保険で支払い能力もない場合、自身(被害者)の保険を利用して補償の不足分をカバーする方法があります。代表的なのが、①自身の死傷について保障する「人身傷害保険」。②自身の同乗者の死傷について保障する「搭乗者傷害保険」。③死亡や後遺障害が残る重大事故に遭い、加害者が不明または加害者に補償能力がない場合に保障する「無保険車傷害保険」。④自動車の修理費など物損に対して保障する「車両保険」の4つです。交通事故の治療には健康保険が利用できるほか、通学中・通勤中の事故であれば労災保険も適用できます。また、加害者が勤務中に起こした事故ならば、会社に責任を問うこともできます。
自分が加害者で無保険の場合のリスクと対処法
これまでとは逆に、自分が無保険状態で交通事故の加害者となってしまった場合の、リスクと対処法を解説します。
リスク
交通事故を起こすと、民事責任(損害賠償する責任)、刑事責任(懲役・禁固・罰金刑)、行政上の責任(免許の取り消しや停止)の3つの責任が発生します。まず、加入が義務付けられている自賠責保険に未加入の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。被害者に対しては、損害賠償金を支払わなければなりません。通常は自賠責保険の保険金で補償できない分を任意保険で補いますが、未加入の場合は莫大な金額を自身で支払うことになります。当事者同士の示談交渉がうまくいかない場合や賠償金を支払えない場合は、裁判で損害賠償請求される可能性もあります。
対処法
自賠責保険の保険金は、人身損害に限られていて限度額もあります。不足分は加害者自身が補填(ほてん)する必要があります。なお被害者が政府保障事業制度を利用すると、国(国土交通省)が加害者に代わって補償します。その後、加害者には国から代わりに補償した金額を返還するように要求があります。応じない場合は訴訟に発展することもあり、裁判所の判決に従って財産を差押えられることもあります。加害者になってしまった時は、自身が加入する保険に無保険事故に関するサービスがないか確認するとともに、一括で支払えない場合は分割での支払いを申し出るなどの対処も必要です。
まとめ
被害者と加害者の両視点から、無保険事故のリスクと対応策を解説しました。加入義務のある自賠責保険と、自賠責保険ではカバーできない損害に備えて加入する任意保険(自動車保険)、それぞれの目的や保障範囲などを正しく理解して、万が一に備えることが大切です。
ちょこっと共済は、東京都の39市町村が共同で運営する公的な交通災害共済で、交通事故に遭い治療を受けた会員に対して見舞金を支給する制度です。
東京都の市町村に住民登録のある方なら年齢・健康状態に関係なくどなたでも加入することができ、会費は年額1,000円または500円と大変安価です。
万が一の事故に備えて、お守り代わりにぜひご加入されてはいかがでしょうか。