共済と保険は混同されることがよくある
共済と保険は、どちらも加入者同士が互いに助け合う精神にもとづいた「相互扶助」の仕組みですが、全く違うものです。似ている点もあるため混同されることがよくありますが、メリット・デメリットが異なるため、どちらに加入した方がいいかは人それぞれです。
本記事では、共済と保険の違いがわかりやすく解説していきます。
共済と保険の違い
共済と保険の大きな違いは、まず加入(契約)対象者が異なることが挙げられます。
また制度上の違いもあり、根拠となる法律(どの法律にもとづいて運営されるか)と監督官庁が異なります。これらの違いによって、使用される用語も異なっています。
共済とは
共済とは、特定の地域の住民や特定の職業に就いている人たちが組合員となって助け合う仕組みです。「共済」という言葉の意味は「力を合わせて助け合うこと」。組合員はお金を出し合うことで、困ったときなどに金銭的な保障を受けられます。保険と異なる点もありますが、お金を出し合い金銭的な保障を行う仕組みという点では似ています。
共済の主な特徴
共済は営利を目的としない「非営利事業」で、組合員のために保障事業を行っています。保障事業のことを「保険」ではなく「共済」と呼び、「共済金」「掛け金」「割戻金」という用語が使われます。加入するには、出資金を支払い組合員になる必要がありますが、加入資格を満たしていれば誰でも加入できることが特徴です。共済の運営は、それぞれの組合が従う法律にもとづいて行われ、組合によって監督省庁が分かれています。共済には、生命共済、医療共済、火災共済、自動車共済など、さまざまな種類があります。
保険とは
保険とは、病気やケガ、事故、自然災害、第三者への損害賠償責任の負担などに不安を感じる人たちが助け合う仕組みです。加入者はお金を出し合うことで、前述したようなアクシデントが生じたときに金銭的な補償を受けられます。保険には、生死に対してお金が支払われる「生命保険」と、事故によって生じた損害額に対してお金が支払われる「損害保険」の2種類があります。
保険の主な特徴
共済が非営利事業なのに対して、保険は民間会社によって運営されている「営利事業」です。保障事業のことを「保険」と呼び、「保険金」「保険料」「配当金」という用語が使われます。生命保険の場合は、健康状態などを理由に加入を制限されることがありますが、地域や職業などで制限されることはなく、誰でも加入できるのが特徴です。保険の運営は、全て保険業法にもとづいて行われ、監督官庁は金融庁です。
共済と保険、それぞれのメリット
共済と保険、それぞれのメリットについて違いをわかりやすく解説します。
【共済のメリット】
掛け金が一律で、保険と比べて割安、割戻金がある
保障内容が同じであれば、年齢や性別によって掛け金(加入者が支払うお金)が変わることはなく一律です(高齢者や子供を除く)。掛け金の金額は、月に数千円程度に設定されていることが多く、保険の保険料と比べて割安です。さらに毎年の決算で余剰金が出れば、「割戻金」として組合員に還元されるものもあり、保険よりも費用を抑えて保障を得られます。
保障内容がわかりやすい
基本的にパッケージ化されているため、保険のようにさまざまな特約を組み合わせて選ぶ難しさがありません。保障内容や掛け金の設定基準もシンプルで、わかりやすい商品が大半です。
加入時の告知が緩やかなことが多い
加入条件もシンプルです。
共済も保険と同じように加入時には告知(健康状態の報告)が必要ですが、過去の病歴は自己申告制(医師の診断書が不要)となっているなど、保険に比べ緩やかなことが多いです。
【保険のメリット】
誰でも契約検討でき、保険商品の選択肢も多く保障も充実
住民登録している地域や職業に限定されることなく誰でも契約を検討できます。保険商品は種類が多く、さらにさまざまな特約を組み合わせることで、自身の目的や状況に合わせた手厚い保障を受けられます。保険商品は年々進化しており、最新の保障サービスを受けられるのもメリットです。
破綻した場合の公的なセーフティネットがある
全ての保険会社は、公的なセーフティネットがあります。
契約している保険会社が破綻してしまった場合も、ほかの保険会社や保険機構が契約を引き継いでくれるため、保障が守られます。
共済と保険、それぞれのデメリット
共済と保険、それぞれのデメリットについて違いをわかりやすく解説します。
【共済のデメリット】
プランのカスタマイズ性が少ない
掛け金を低く抑えるためシンプルな仕組みになっており、パッケージ化されたいくつかのプランから保障内容を選ぶことになります。そのため「保障Aは必要だが保障Bは外す」といったような保障内容のカスタマイズは、限られます。特約の取捨選択もできません。
保障が限定的、補償金額も少ない
掛け金を低く抑えられる代わりに、保険と比べて保障が限定的であり、受け取れる補償金額も最低限の範囲にとどまります。また、保険のように積み立てを兼ねる「貯蓄タイプ」も多くありません。
そのため、共済だけでは十分な保障が得られない場合があるので注意が必要です。
高齢になると保障が手薄くなることがある
保障期間が「終身」の商品が少なく、高齢になるにつれて加入できる商品が限られたり、一定の年齢になり更新を迎えると掛け金は変わらずに補償金額が少なくなる商品があります。中には、保障を受けられない状態になる商品もあるため、加入時に確認が必要です。
公的セーフティネットがない
共済の組合が破綻した場合は、保障が受けられなくなります。ただし補償金額が小さい分、加入者が負う損失も限定されます。
共済の種類や地域によっては加入できない
住民登録している地域や勤務地、職業が限られるなど、共済の種類ごとに組合員になれる条件があります。そのため自分が加入対象者かどうかの確認が必要です。転居や転職により継続が不可能となる場合もありえます。
【保険のデメリット】
保険料が割高、年齢・性別によっても大きく異なる
保険は保障内容が手厚い代わりに、共済と比較すると一般的に保険料が割高です。
年齢や性別によって保険料が大きく変わり、年齢が上がるにつれて保険料も上がっていく傾向があります。
加入条件が多い
保険会社や保険の種類によって、条件はさまざま。補償金額や保障内容が手厚くなるほど、加入条件も多くなる傾向があります。共済と比べて、加入時の告知(健康状態の報告)も厳しくなるほか、職業によって加入が制限されることもあります。
共済か保険かを選ぶときの注意点
前述してきた共済と保険の違いを踏まえたうえで、どちらを選ぶべきでしょうか? 選ぶときの注意点を解説します。
メリットだけではなく、デメリットも理解することが重要
共済と保険は似ている点もありますが、全く違うものです。選ぶときは、それぞれのメリットだけでなく、デメリットも理解して加入することが重要です。そうすることで最適な保障を得られます。
加入目的を明確にする
共済と保険、また共済同士、保険同士でも特徴は異なります。自分が必要とする保障と、加入する共済や保険の保障内容を一致させることが大切です。
検討の際には、まず加入目的を明確にするとよいでしょう。
共済を選ぶ場合は補償金額、保障期間を確認する
「共済のデメリット」の部分で解説しましたが、共済は手軽さが魅力な一方で保障が比較的小さいのが特徴です。共済を選ぶ場合(共済のみで保障を考えている場合)は、補償金額が十分か、何歳まで保障が続くかを確認することが大切です。
どちらかだけを選ぶ必要はない
共済と保険には、それぞれの良さがあります。どちらか1つだけにしぼる必要はなく、共済に加入した上で、不足している保障を保険で補うという方法もあります。
大切なのは、それぞれの違いを理解したうえで、自分に必要な保障を確保することです。
共済と保険、それぞれ向く人・向かない人
共済に向いている人・向かない人、保険に向いている人と向かない人をそれぞれ解説します。
共済に向いている人
独身など扶養の必要がない人や十分な貯金があり掛け金を少なくしたい人、最低限の保障で備えたい人など、手厚い保障を必要としていない人は共済に向いています。ほかの保険に加入しており、不足分を補いたい人にもおすすめです。
また、保険で加入制限を受けた人も、加入条件が少ない共済を検討すると良いでしょう。
共済に向かない人
保障期間が「終身」の共済は多くありません。また、死亡保障の額面も保険と比べて低く設定されています。終身の保障、十分な死亡保障を希望するなら、保険も含めて検討することが望ましいでしょう。
保険に向いている人
高い保険料を払っても、手厚い保障を受けたい人は保険に向いています。保険なら、さまざまな特約の追加で自分に最適な保障をオーダーメイドすることもできます。また、より今の時代に合わせた最新の保障を利用したい人も保険向きです。
保険に向かない人
保険に向かない人は、いません。日本は公的保障が充実していますが万能ではありません。それだけで「何が起きるかわからない」将来のリスク全てに備えることは難しいでしょう。あえて保険が必要のない人がいるとすれば、すでに充分な金額の貯蓄がある人です。
まとめ
掛け金が一律で保険より手軽に保障が得られる共済と、オーダーメイド感覚で手厚い保障が得られる保険など、2つの違いについて解説してきました。さらに共済と保険には、さまざまな種類があるため、選択に悩むこともあるでしょう。しかし、それぞれの特徴、メリット、デメリットを理解し、加入目的に合わせて選ぶことで、自分に適した商品を見つけることができます。本記事の内容を参考にしてください。
ちょこっと共済は、東京都の39市町村が共同で運営する公的な交通災害共済で、交通事故に遭い治療を受けた会員に対して見舞金を支給する制度です。
東京都の市町村に住民登録のある方なら年齢・健康状態に関係なくどなたでも加入することができ、会費は年額1,000円または500円と大変安価です。
万が一の事故に備えて、お守り代わりにぜひご加入されてはいかがでしょうか。