賠償金が発生する電車の事故とは?
電車の事故で、賠償金が発生するケースについて、わかりやすく解説します。
加害者に故意または過失があるケース
賠償金が発生するのは、加害者に故意または過失があったケースです。その場合、運営する鉄道会社は、民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」を根拠に、加害者に賠償金を請求できます。「加害者に故意や過失があった」と認められやすいのは、電車への飛び込み自殺や踏切内への立ち往生、路線への進入、線路への置き石などです。
電車の事故の賠償金はどのくらい?
電車の事故で請求される賠償金の内訳と金額について、わかりやすく解説します。
賠償金の内訳
鉄道会社からの損害賠償請求の内訳は、一般的に「振替輸送費」「修理費」「人件費」などです。振替輸送費は、列車が遅れたことによる振替輸送にかかった費用や払い戻し費用。修理費は、車両など破損したものの修理費用。人件費は、復旧のために要した人件費です。それぞれ具体的な被害の程度によって、請求金額は大きく異なります。例えば、同じ修理費でも、脱線事故は数千万円の賠償金が発生しますが、そうでなければ数万円〜数十万円程度になることが多いようです。
賠償金は一般的に数百万円単位
前項のとおり、賠償金額は具体的な被害の程度によって大きく異なります。例えば、通勤ラッシュ時間などに起きた事故などは賠償金が高額になるケースもありますが、一般的に数百万円単位です。列車事故の賠償金は、数千万円〜数億円というイメージがあるかもしれませんが、実際のところはそれほど高額な請求はほとんどありません。
減額されるケースもある
鉄道の事故の場合、被害額を全て計上すると数千万円単位になることもあります。しかし、鉄道会社からの損害賠償請求では、全額を請求されることは少なく、減額した金額を加害者が支払うことで和解するケースが多いです。具体的には、加害者側と鉄道会社側で話し合い、加害者や遺族の生活状況や支払い能力を踏まえて支払う金額が決まります。
人身事故の場合
人身事故、踏切事故、置き石による事故、責任無能力者による事故、それぞれについて解説します。この項では、人身事故の場合を解説します。
請求は本人または遺族に行なわれる
電車の人身事故を引き起こし、故意や過失があった場合は、本人が賠償責任を負います。しかし、本人が死亡した場合は遺族が損害賠償義務を相続します。遺族は、現金や貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や損害賠償義務といったマイナスの財産も相続することになるのです。
遺族は相続放棄ができる
相続放棄とは、遺族が家庭裁判所に申請することによって、死亡した家族の財産に対して一切の権利を放棄することです。これにより、損害賠償義務を相続しなくて済むようになります。ただし、相続放棄は、現金や貯金などのプラスの財産も相続できなくなることに加えて、複数の相続人がいる場合は、自分が放棄すれば次の順位の人がマイナスの財産を負うことになります。
踏切事故の場合
踏切事故の場合について、わかりやすく解説します。
請求は本人に行なわれる
踏切事故には、遮断機が降りている間の無理な横断や自動車の整備不足によるエンジン停止や脱輪による立ち往生などさまざまなケースがあり、電車の事故の中で多く発生しています。自動車の運転手が踏切事故を起こした場合、賠償責任は運転手である本人にあります。また、故意でなくても運転手に過失がある場合、損害賠償責任を負わなければならないことがあります。
鉄道会社に落ち度があれば減額される
ただし、鉄道会社側に過失(落ち度)があれば、運転手が負う損害賠償金は減額されます。例えば、踏切の作動に問題があったケースや、非常停止ボタンに不具合があったケースです。なお、故意ではなく自動車による踏切事故を起こしてしまった場合は、任意保険に加入していれば、保険会社から賠償金が支払われます。
置き石の場合
置き石による事故の場合について、わかりやすく解説します。
子どものいたずらの場合の請求は親に行なわれる
子どもが線路に置き石をしたり、石を投げたりして、それが原因で電車の運行がストップした場合や車両を破損させた場合、脱線などの事故を引き起こしてしまった場合などは、監督責任のある親(保護者)に賠償責任があります。車両の破損や脱線で被害が大きくなれば、その分、賠償金は高額になります。
複数人で支払う場合もある
置き石をした本人だけでなく、それを見ていて止めなかった人にも損害賠償責任が課せられたケースもあります。1980年に起きた「京阪電気鉄道置石脱線事故」では、中学生のいたずらにより脱線事故が起こり、1両目が民家に突っ込み、2両目は横転。104人が負傷しました。置き石をした本人を含め5人の中学生が逮捕され、1人当たり840万円の賠償金の支払いが命じられました。
責任無能力者の場合
事故を引き起こしたのが責任無能力者の場合について、わかりやすく解説します。
請求は監督義務者に行なわれる
責任無能力者とは、うつ病や認知症など精神上に障害があり責任をとることができない人のことです。法律で、責任無能力者が引き起こした事故の損害賠償責任は、監督義務者(親など)が負うことが定められています。鉄道の事故の場合も、責任無能力者が引き起こした場合、監督義務者に賠償金が請求されます。
監督義務者が支払い不可の場合は自己破産を検討することも
監督義務者が、責任無能力者の介護者であるなど、相続人ではないこともあります。その場合、監督義務者は、相続放棄によって損害賠償請求の支払い責任を放棄することができません。このような事態になり、支払いができない場合は、自己破産する方法があります。
電車の事故の賠償金について知っておきたいこと
万が一電車の事故に関わってしまった時に備えて、賠償金について知っておきたいことを解説します。
裁判に発展することは少ない
鉄道会社は、加害者本人や遺族、監督義務者に賠償金を支払う能力がなく、損害を回収できる資産がないと判断した場合、あえて裁判を起こすことはしません。そのため、電車の事故の場合、裁判までは発展することはまれで、ほとんどが示談や相続放棄によって解決しています。
対応は冷静に判断する
前項で解説したとおり、数千万円や数億円など高額の賠償金が発生することはほとんどありません。
そのため、賠償金を遺産で支払えるかどうか冷静に判断することができるでしょう。もし支払いができない場合でも、相続放棄や自己破産などの解決方法を選ぶことができます。
弁護士に相談する
子どもが電車の事故を起こしてしまったり、加害者遺族になってしまった場合、冷静ではいられないものです。鉄道会社から賠償金を請求され、自分での対応が難しい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。賠償金に充てる遺産の相続に伴う手続きや相続放棄・自己破産の選択など、多くの場面でサポートを受けられます。
保険・共済の補償が受けられる場合がある
自動車の任意保険や共済に加入している場合、電車の事故の補償を受けられるケースがあります。例えば、交通災害共済の「ちょこっと共済」加入者は、万が一電車との接触事故などで死傷した場合に、被害の程度に応じた見舞金(最高300万円)を受け取れます。ただし、自殺および故意または重大な過失による事故の場合を除きます。
まとめ
数千万円を超えるような高額な賠償金が請求されるイメージがある電車の事故ですが、実際にはそのようなケースはほとんどなく、一般的に数百万円単位であることをお伝えしました。自分が起こさなくても、子どもの過失で起きてしまうと、監督責任のある親(保護者)に賠償責任があります。万が一、そうなってしまった場合は、本記事で解説した内容を参考に、冷静に対処してください。
ちょこっと共済は、東京都の39市町村が共同で運営する公的な交通災害共済で、交通事故に遭い治療を受けた会員に対して見舞金を支給する制度です。
東京都の市町村に住民登録のある方なら年齢・健康状態に関係なくどなたでも加入することができ、会費は年額1,000円または500円と大変安価です。
万が一の事故に備えて、お守り代わりにぜひご加入されてはいかがでしょうか。