事故を起こすと保険料が上がる仕組み
保険料が上がるのは、等級制度が関わっているからです。等級制度について、わかりやすく解説します。
等級制度とは
等級制度とは、交通事故などで保険金を受け取った経歴などをもとに等級が決まり、その等級ごとに保険料を割引・割増する仕組みです。自動車保険加入後に、交通事故を起こさない期間が長いほど(または起こしても保険金を受け取らなければ)、保険料の割引率が高くなり、保険料は安くなっていきます。等級は1等級~20等級まであり、等級の数字が大きいほど保険料の割引率が高くなります。初めて自動車を保有し、初めて自動車保険に加入する場合は原則として6等級が適用され、以前に自動車保険の契約がある場合は前契約の事故の件数や種類によって等級が決まります。等級が変わるタイミングは、翌年度の自動車保険の更新時です。
事故を起こすと等級はどうなる?
1年間無事故の場合(または起こしても保険金を受け取らなければ)、翌年度の等級は1つ上がります。しかし、事故を起こして保険金を受け取った場合は、翌年度の等級は下がり、さらに「事故有」の等級になってしまいます。「事故有」と「無事故」では、保険料の割引率が異なり、同じ等級でも「事故有」の方が「無事故」よりも割引率が低くなり、保険料は高くなります。また、「事故有」の等級が続く期間のことを「事故有係数適用期間」と呼びます。翌年度の等級の下がり方(いくつ下がるか)と事故有係数適用期間(「事故有」が何年続くか)は一律ではなく、事故の種類で決まります。
自動車保険の等級に関係する事故の種類
自動車保険の等級に関係する事故の種類について、わかりやすく解説します。
3等級ダウン事故
翌年度の契約の等級が3等級下がる事故です。次項以降で説明する「1級ダウン事故」「ノーカウント事故」に該当しない全ての事故で、対人賠償責任保険・対物賠償責任保険・車両保険を利用した場合が3等級ダウン事故に該当します。例えば、自動車同士で衝突事故を起こして相手を死傷させた、通行人や自転車に接触して死傷させた、自動車で衝突して建物や電柱などを破損した、自分の自動車を破損したなど、自動車で交通事故を起こした場合の大半が該当します。また、たとえ相手の過失割合の高い事故であっても、3等級ダウン事故として扱われます。なお、3等級ダウン事故を起こすと、事故有係数適用期間は3年加算されます。
1等級ダウン事故
翌年度の契約の等級が1等級下がる事故です。偶発的な原因(自分に非がない事故)によって自動車が破損し、車両保険などを利用した場合が該当します。例えば、自動車が火災または爆発した、自動車が盗難に遭った、飛び石などで自動車の窓ガラスが破損した、自動車にらくがきなどのイタズラをされた、台風や地震などの自然災害で自動車が破損したなどです。なお、1等級ダウン事故を起こすと、事故有係数適用期間は1年加算されます。
ノーカウント事故
翌年度の契約の等級に影響しない事故です。人身傷害保険、搭乗者傷害保険のみを利用した場合、保険の各種特約のみを利用した場合、弁護士費用等保険を利用した場合が該当します。例えば、自動車乗車中に事故に遭い、自分や同乗者がケガをして人身傷害保険や搭乗者傷害保険を利用したが、他人に損害を与えず自分の自動車が損傷することもなかった場合は、ノーカウント事故となります。また、もらい事故に遭い弁護士費用等保険を利用した場合もノーカウント事故です。なお、事故有係数適用期間は加算されません。
事故を起こすと保険料はいくら上がる?
各等級で保険料の割引率・割増率が定められています。事故を起こすと保険料がいくら上がるか、解説します。
3等級ダウン事故を起こした場合
実際に3等級ダウン事故を起こした場合、保険料はどのように変わるのか。「現在の保険料7万円/年・現在6等級・無事故」の場合を例に見ていきます。3級ダウン事故を1回起こした場合と無事故だった場合の、4年後までの保険料を比較したのが下の表です。
3等級ダウン事故を起こした場合 |
年 |
等級 |
適用割増引率 |
保険料(イメージ) |
次年度 |
事故あり3等級 |
12%割増 |
97,000円 |
2年後 |
事故あり4等級 |
2%割引 |
85,000円 |
3年後 |
事故あり5等級 |
13%割引 |
75,000円 |
4年後 |
無事故6等級 |
19%割引 |
70,000円 |
合計額(概算):327,000円 |
無事故だった場合 |
年 |
等級 |
適用割増引率 |
保険料(イメージ) |
次年度 |
無事故7級 |
30%割引 |
60,000円 |
2年後 |
無事故8級 |
40%割引 |
52,000円 |
3年後 |
無事故9級 |
43%割引 |
49,000円 |
4年後 |
無事故10級 |
45%割引 |
48,000円 |
合計額(概算):209,000円 |
※「等級の割増引率表」に従って計算した保険料のイメージであり、実際の保険料とは異なります。
※詳細は契約する保険会社・共済でご確認ください。
3等級ダウン事故を起こして保険を利用した場合、翌年度から4年後までの保険料の合計額は「32万7000円」になります。一方、無事故の場合は「20万9000円」です。3等級ダウン事故を起こすと保険料の負担が4年間で11万8000円も増えてしまうのです。
1等級ダウン事故を起こした場合
実際に1等級ダウン事故を起こした場合、保険料はどのように変わるのか。「現在の保険料7万円/年・現在6等級・無事故」の場合を例に見ていきます。1級ダウン事故を1回起こした場合と無事故だった場合の、4年後までの保険料を比較したのが下の表です。
1等級ダウン事故を起こした場合 |
年 |
等級 |
適用割増引率 |
保険料(イメージ) |
次年度 |
事故有5等級 |
13%割引 |
75,000円 |
2年後 |
無事故6等級 |
19%割引 |
70,000円 |
3年後 |
無事故7等級 |
30%割引 |
60,000円 |
4年後 |
無事故8等級 |
40%割引 |
52,000円 |
合計額(概算):257,000円 |
無事故だった場合 |
年 |
等級 |
適用割増引率 |
保険料(イメージ) |
次年度 |
無事故7級 |
30%割引 |
60,000円 |
2年後 |
無事故8級 |
40%割引 |
52,000円 |
3年後 |
無事故9級 |
43%割引 |
49,000円 |
4年後 |
無事故10級 |
45%割引 |
48,000円 |
合計額(概算):209,000円 |
※「等級の割増引率表」に従って計算した保険料のイメージであり、実際の保険料とは異なります。
※詳細は契約する保険会社・共済でご確認ください。
1等級ダウン事故を起こして保険を利用した場合、翌年度から4年後までの保険料の合計額は「25万7000円」になります。一方、無事故の場合は「20万9000円」です。1等級ダウン事故を起こすと、保険料の負担が4年間で4万8000円増えてしまいます。
■等級の割増引率表
等級 |
無事故 |
事故有 |
20 |
63%割引 |
44%割引 |
19 |
55%割引 |
42%割引 |
18 |
54%割引 |
40%割引 |
17 |
53%割引 |
38%割引 |
16 |
52%割引 |
36%割引 |
15 |
51%割引 |
33%割引 |
14 |
50%割引 |
31%割引 |
13 |
49%割引 |
29%割引 |
12 |
48%割引 |
27%割引 |
11 |
47%割引 |
25%割引 |
10 |
45%割引 |
23%割引 |
9 |
43%割引 |
22%割引 |
8 |
40%割引 |
21%割引 |
7 |
30%割引 |
20%割引 |
6 |
19%割引 |
19%割引 |
5 |
13%割引 |
13%割引 |
4 |
2%割引 |
2%割引 |
3 |
12%割増 |
12%割増 |
2 |
28%割増 |
28%割増 |
1 |
64%割増 |
64%割増 |
事故を起こして保険を使うか決めるポイント
事故を起こしても、保険を利用しなければ保険料は上がりません。保険を使うか決めるポイントを解説します。
損害額と保険料の値上がりを比較する
等級ダウンによる保険料の上昇が、事故による損害額(ケガの治療費、自動車の修理費、相手方への賠償金)を下回る場合は保険を利用した方が金銭的負担を抑えられます。逆に、等級ダウンによる保険料の上昇が、事故による損害額を上回る場合は、保険を利用せずに自己負担で対応した方が金銭的負担を抑えられます。例えば、自動車の修理費用が10万円で元の等級に戻るまでに保険料として10万円を超える金額を余分に支払う必要があるならば、自己負担の方がお得です。ただし、保険を利用すると示談交渉を会社に任せられるというメリットもあるので、総合的に判断しましょう。
保険を使った後の等級を考える
「等級ダウンによる保険料の上昇が、事故の損害額を下回る場合」でも、自己負担で対応した方が良いケースがあります。それは、保険を使うと翌年度の等級が「1等級」や「2等級」になるケースです。特に1等級になってしまうと、保険会社から翌年度の契約継続を断られてしまうことも考えられます。なお、等級や事故の情報は保険会社間で共有されています。そのため保険会社を変更しても等級はリセットされず、現状の等級のままです。最悪、契約を引き受けてくれる保険会社がないような状況もあり得ます。
まとめ
事故を起こすと保険料が上がる仕組みについて解説してきました。このように事故を起こして保険を使用すると、翌年度の等級が下がり保険料の割引率が下がります(3級以下は割増率になる)。保険は万が一の時の備えとして契約するものですが、場合によっては保険を利用しない方がよいケースもあるのです。
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